根室本線で大雪被害発生
2006年1月19日、この日は午前中旭川で用事を済ませ、午後はフリーの日でした。穏やかな天気だったため、富良野線の前方展望動画を撮影しながら富良野駅まで乗車しました。しかし、富良野に到着するころから天気は急変します。次第に雪の降り方が強まり始め、事態は風雲急を告げていくことになります。
15:45 富良野駅を定刻に出発
富良野では駅そばを食べたり、町の写真の撮影をしたりして観光を楽しんだ。ボックスシートを確保してコーヒーを飲みながら滝川を目指す。車内はとても穏やかな感じで、みんなものんびりと普通列車での移動を楽しんでいるようだった。島ノ下駅、野花南駅、上芦別駅、芦別駅と順調に進み、芦別では高校生がたくさん乗ってきた。地元では「あしこう」という芦別高校の生徒だろう。滝川方面からも結構な数の生徒が通学しているようだ。
芦別では雪の多さに驚いた。このあたりに住む高校時代の友人にメールをしてみると、正月後にドカンドカンと降ったらしい。
16:25 平岸駅到着
次第に雪の降り方が激しくなり、外も暗くなってきた。「あーぁ、今日も帰ったら除雪かぁ」なんて少し憂鬱になりながら外を眺めている。
異変を感じたのは列車の到着時だった。スムーズに停車するのではなく手前で「停まってしまった」ような感じだったのだ。停車後、エンジンをふかし2、3度少しずつ前進する。電車でGO!でいう構内再加速?という感じでとりあえず停車位置まで。そこでドアが開き乗客の乗降が行われた。
平岸駅を出発不能に
ドアが閉まりいざ出発・・・。ところが、ゴオオオオン、ゴオオオオオオンゴオンンンンン・・・・。威勢のいい音が響くが全く車両が動かない・・・。高校生も他の乗客もこの異変に気づき「滑っているのか?」「こんなに乗って重たいから動かないのか?」「(ちょっと太めの男子学生に)お前が重いからだ」などの声が響く。まだ、みんな余裕の表情をしている。
でも様子が明らかにおかしい。でも、いったい何が起こったのかがわからない。故障でもしたのかなと思いながら待っていると、しばらくして、「ただいま平岸駅停車中です。(停車中なのかよぉと高校生のつっこみ)降雪のため列車が前に進む事ができません。発車までしばらくお待ち下さい」と放送が入る。この放送に、乗り継ぎを心配した客が多数問い合わせ。どうやら、滝川より先に行く予定の乗客も多いようだ。運転士が「乗り継ぎのお客様は運転士がまわりますのでお申し出下さい」と放送が入る。
無線でのやり取り
私はビデオを持っていたのでデッキに出て様子を撮影した。運転士は指令に状況を報告し指示を仰いでいるようだ。運転士からは、「乗客は50名近く乗っています」「やってみたけど全然ダメです」「パートナー社員の方が除雪してくれています」「あおってみたけど全然ダメです」。指令からは、「下り列車は茂尻停車中」「滝川駅社員が向かっています」というようなやりとりである。運転士は分かった情報を車内放送で丁寧にアナウンスをする。私には、精一杯対応しているようには見えたが、厳しい乗客もいて、「何のために滝川駅社員が来るのか、来てどうするのか、どれくらい待たなければならないのかを言わないと説明をしている事にならない!」とクレームをつける。まぁ、これもごもっともです。
真面目な若手運転士さんは、このクレームに対して誠意をもって対応し、しっかりと情報を集めてから再び車内放送で詳細を説明する。運転士さんは、「車両を少しバックさせて前に進むため、誘導のために駅社員が向かっている。その到着まで30分ほどかかる。」ということ、接続列車については、「ライラックも遅れてはいるが接続を取るかどうかはこの列車が動き次第判断する。」ということを伝えていた。そして、ホーム放送では、「滝川行の普通列車は、平岸駅で列車が走行できない状態になっているので到着までしばらくお待ちください。」と、無人の各駅に列車が進まないことを知らせるアナウンスが流れている。これを聞いて、親が迎えに来ることのできる高校生がごっそりと下車する。どうにもこうにも簡単には動かなそうな雰囲気である。
対抗列車からベテラン運転士登場&脱出動画
もうとっぷりと日が暮れて、無線の音とエンジン音が響く車内。しまいました。すると、前方から対向する普通列車の光が見えてきました。幸い平岸駅が行き違いができる駅だったため、対向列車が到着できたのです。そこで運転士さんがひらめきました。
「2435Dの運転士さんに誘導してもらっていいですか?」
これなら、滝川駅員の到着を待たずしてバック&前進ができるのでは。指令から許可が出たのだと思うが、「これから対向列車の運転士の誘導をうけて車両をバックさせ前進させます」と放送が入る。
すでに17:00になっていたので30分以上ここにいることとなる。さぁ、いよいよ脱出なるか。
なんと、運転士が飛び降り
誘導というから後ろで旗でも振るのかと思って見ていると、ベテラン運転士さんが「バックさせて前進させるから、動いたらすぐ交代だぞ!」という。若い運転士が「ハイ!!」と威勢良く返事をするが、実はちょっとわかっていないようでオロオロしている。
ベテラン運転士「バックだな、よっと・・・」
まわりのおじさん「う、うごいた」
見事に脱出成功である。ベテラン運転士は、こちらをチラリとみてニヤリとし、さわやかに列車から飛び降り自分の運転する列車に戻っていった。
一部始終を撮影した動画をご覧ください
結局、隣駅の茂尻で運転打ち切り
列車は次の停車駅「茂尻」に到着する。今度は埋まった様子がないが信号が赤。運転士が無線で確認すると、ハイモ(除雪車両)がこの先の滝川~東滝川に入っていると。運転士は「赤平までいけませんか」というが、結局ダメということになってしまった。運転中止となり、代替バスが到着したのは18:20ころ。
無事に乗り継ぎ・帰宅へ
最初は情報をうまく伝えられなかった運転士さんに腹が立ったが、乗客の要望に忙しい中でも精一杯対応してくれてたので、近くにいたおじさんと一緒にお礼を言って下車をした。滝川駅到着は18:55だった。我々は、19:30のスーパーホワイトアロー28号新千歳空港行や、19:41札幌行の普通列車への乗り換えとなったが、この普通列車はキハ40だったので、もう今日はキハ40は嫌だなと思い、600円追加で特急で江別に帰った。気分転換に遠回りしてハマッたのでまあ、文句は言えませんが・・・。疲れました。家に帰るとものすごく大量の雪が車を埋めていたので、車の発掘作業。約3時間かけて一台を救出した・・・。全身が痛い。
JR社員と名乗る者からのコンタクト
この記事を公開してまもなく、サイトの訪問者からメールで「知り合いの運転士の手柄だからアドレスを教えてあげていいですか?」という問い合わせがありました。もちろん、「なまら北海道だべさ」はどのページもリンクフリーにしていますので、当然のようにOKをしました。
ところが、しばらくしてJR社員と名乗る方から、「この動画は無線の音声が入っているので、無線を傍受したことになるから動画の公開をやめたほうがいいよ。」とメールが来ました。
当時、ふるさと銀河線貸し切りオフ会も控えており、いろいろめんどくさいことが起こったら嫌だなと思い記事を削除してしまいました。ところが、その後いろいろ調べていくと、この動画を公開するにあたって私は何ら法律に違反するような点が無いことを確認しました。むしろ、安全管理や社内の規約に違反している可能性があるのではないか、そしてそれを隠蔽しようとしているのではないかとさえ思ってしまいます。この動画で何かを追求するとか、何か訴えるとかそんなつもりは微塵もありません。じゃあ、運転士さんのために公開をやめればいいのか。それも変な話ですよね。ただ旅先で経験したことを記事にまとめたものなのです。もし何かしら問題があるのなら、それはそれとしてしっかりと考えるべきものです。
近年、石勝線トンネル火災事故以来、車両故障や居眠りなどJR北海道絡みの不祥事がいろいろと報道されてきましたが、乗客のために現場で必死に頑張っている方々もたくさんいます。組織としては非難されるべきところもありますが、現場で頑張っている職員一人一人は応援していきたいなと思います。